タクシーやバスのプロドライバーにとって、救急救命スキルは「安全運転」と同じ重要な業務スキルです。
二種免許取得時に受ける応急救護教習では学べない「現場のリアル」特に男性ドライバーが女性を救護する際のリスクと実践的対応策を、現役タクシードライバーの筆者が赤裸々に解説します。
「AED使用時の下着処理でセクハラ疑惑?」「意識不明の女性客への接触が炎上リスクに?」教習所で白熱した議論や教官のアドバイス、家族との葛藤を交えながら、救命率を落とさずに身を守る具体的な方法をお伝えします。
プロドライバーとして知っておくべき「今の救命処置の常識」を、明日からの業務に活かしてください。

アラフォーの現役タクシードライバー🚕 特徴:二種免許取得で禁酒 家族:妻と不妊治療を経て授かった子ども1人 過去のキャリア 🐹公務員 (企画・立案コンサルタント的な経験が豊富) 🐹ミドルウェアのプログラマ 🐹福祉業界の営業職 |
1. 応急救護処置教習の概要
応急救護処置教習は、自動車教習所の第二段階で受講します。
筆者の場合、座学4時間、実習2時間の計6時間でした。
座学では応急救護の基礎知識を学び、実習では人形を使った心臓マッサージやAEDの操作を練習します。
注意点
- 筆者の通った教習所では、応急救護処置教習は月に2~3回しか実施されず、募集定員も限られていました。
- 通所予定の教習所のスケジュールを事前に確認することをおすすめします。
2. 応急救護処置教習で習った立ち振る舞い

応急救護処置の基本手順は以下の通りです。
覚えておくと、いざという時に役立ちます。
読み返すのもいいでしょう。
2.1 基本手順

- 安全確認:周囲の安全を確認し、自分や要救護者が二次被害に遭わないようにします。
- 意識確認:要救護者の肩を軽く叩き、声をかけて意識があるか確認します。
- 助けを呼ぶ:周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を依頼します。目が合った人でいいので積極的に声をあげましょう。
- 呼吸確認:要救護者の呼吸を確認します。呼吸がない場合は直ちに心臓マッサージを開始します。
- 心臓マッサージ:胸の中央を5cmほど沈み込むイメージで強く押し、1分間に100~120回のペースで行います。
- AED使用:AEDが到着したら、音声指示に従って操作します。AEDの使用前後は呼吸確認と心臓マッサージを繰り返します。
2.2 各段階での積極的な声かけ
応急救護では「誰に」「何を」伝えるかが重要です。
特に第三者への協力要請は、具体的な指示と明確な依頼が命を救います。
以下はタクシードライバーが現場で使える実践的な声かけ例です。
- 119番通報とAED手配
- 例1:
「そこの赤いシャツの方! 119番通報をお願いします!
黒いバッグの方、AEDを探してください!」
→ 「相手の特徴を指定」して指名すると、責任感が生まれ動きやすくなります。
2. 女性の協力を求める
- 例2:
「女性の方、お手伝いいただけませんか?
この方の呼吸が止まっています! 一緒に心臓マッサージをお願いします!」
→ 性別を明示し、緊急性を強調することで協力者が動きやすくなります。要救護者が女性の場合は女性の対応が好ましいのでお願いする人は意識して選びましょう。
3. プライバシー配慮の依頼
- 例3:
「すみません、カーテン代わりに上着をかけたいので、周囲の人を少し遠ざけていただけますか?」
→ プライバシー保護を「具体的な行動」で依頼します。
2.2.1 要救護者への声かけ
1. 意識確認
- 例4:
「大丈夫ですか?! わかりますか?!(肩を軽く叩く)」
→ 低い声でなく、大きくハッキリとした声で呼びかけます。
2. 処置中の説明
- 例5:
「今から胸を押します! AEDを使いますので、体から離れてください!」
→ 周囲や要救護者に行動を事前告知し、誤解を防ぎます。
2.2.2 緊急隊到着後の引継ぎ
- 例6:
「5分前から心臓マッサージを継続中です。
AEDは1回作動させましたが、反応なしです!」
→ 時刻・処置内容・変化を簡潔に伝えます。
3 応急救護のポイントまとめ

- 指名する: 「あなた」「青い帽子の方」など具体性を持せて明確に指名する。
- 行動を指定する: 「119番」「AEDを探して」と役割を明確化。
- 理由を添える: 「救命のため」「二次被害を防ぐため」で理解を得る。
これらのフレーズを事前にシミュレーションしておくことで、緊急時でもスムーズな対応が可能になります。
3.1 AEDの設置されている施設等

AEDが設置されている施設例は以下です。
- 公共施設(市役所・駅、スポーツ施設など)
- 幼稚園、小中学校などの教育機関
- 商業施設(コンビニ等)
- 医療機関
4. 応急救護処置教習での議論

筆者の教習では、実際に応急救護処置が必要な場面に遭遇した場合のシミュレーション等を行いました。
そのなかで、女性を救護する際のリスクについて議論が白熱しました。
意識がある場合、本人の希望を尊重しながら適切な救護を行うことが重要です。
教官からは、「リスクを理解しつつも、迅速な対応が救命率を上げる」と強調されました。
また、男性ドライバーが車内で寝てしまった女性客を起こす際のリスクについても話題になりました。
5. 男性ドライバーが女性を救護するのはリスク?

男性ドライバーが女性を救護する場合にはいくつかのリスクが考えられます。
以下にそのリスクと対応策を紹介します。
しかし、リスクを避けると要救護者の生存率が下がる可能性があります。
リスク1: セクハラと言われたりわいせつ罪で訴えられるリスク
AEDパッドを正しく貼るために、衣服をずらしたり、ワイヤー部分をハサミで切る対応が求められる場合があります。
しかし、必ずしも下着を脱がせる必要はなく、周囲の協力を得ながら適切な処置を行うことが重要です。
対応策
- 周囲に女性がいる場合は、女性に心臓マッサージやAEDの操作を依頼する。
- 下着を脱がせる際は、布などを被せてプライバシーに配慮する。
適切な応急救護は法的に正当な行為とされます。ただし、誤解を避けるため、周囲の協力を求めるなどの配慮が重要です。
しかし、応急救護処置を行なっている様子がSNS上などでセクハラだと拡散・誹謗中傷され、デジタルタトゥーとして残る可能性があります。
法に問われないのと、世間でどう思われるかは別問題です。
参考(外部リンク)
「AED」のため女性の服を切ったら「痴漢」扱いされた――人命救助でもダメなのか? | 弁護士ドットコムニュース
リスク2: 寝た女性客を起こす際にセクハラ扱いされるリスク
男性タクシードライバーの場合、車内で寝てしまった女性客を起こす際、触れる行為がセクハラと受けとられるリスクがあります。
対応策
- 声掛けを優先し、最小限の接触にとどめる。
- 第三者を同席させ、証人がいる状況で対応する。
- 記録を残し、自分の行動が適切であったことを証明できるようにする。
- 会社のマニュアルや上司の指示に従う。
参考(画像)
筆者ならどうするか
応急手当について学んだ後、そのリスク管理について家族に詳しく説明し、「もし路上で救護を必要とする女性を見かけたらどうすべきか」と具体的な事例を投げかけました。
家族は『迷わず助けるべきだ』と答えました。
このような経緯を経て筆者は、緊急時にはためらうことなく人命救助を最優先に行動する決意を固めました。
6. まとめ

応急救護処置は、命を救うために必要なスキルですが、男性が女性を救護するのは残念ながらリスクも伴います。
リスクを理解し、適切に対応することが重要です。
お客さん等を移送するプロとして、また、プライベートにおいてもこれらのポイントを押さえて、万が一の際に適切な行動が取れるよう準備しておきましょう。
教習所での応急救護処置教習は、スケジュールが限られていることが多いので、早めに予約することをおすすめします。
ぜひこの記事を参考に、応急救護の知識を身につけてください!
以上、二種運転免許の応急救護処置についての解説でした。
役立つ情報となれば幸いです!