二種免許を取得したからといって、すぐにプロのドライバーとしてお客様を乗せられるわけではありません。実際にお客様を乗せて街を走るには、実地を伴う徹底した研修が不可欠です。この記事では、筆者自身の体験を交えながら、二種免許取得後にどのような知識とスキルを身につけ、現場に立つまでの過程をリアルにご紹介します。
この記事の結論
二種免許取得後の研修では、単なる運転技術だけでなく、実地での状況判断力、法令遵守の知識、お客様への対応力、そして日々の業務を安全かつ円滑に進めるための実務スキルを総合的に習得します。この充実した研修があるからこそ、未経験からでもプロのタクシードライバーとして自信を持って現場に出られるようになります。
- タクシー研修の全貌:二種免許取得後の研修内容(同乗・座学・実務)を網羅的に解説。
- 実践スキル習得:空港送迎、機器操作、車椅子対応など、現場で役立つ具体的なスキルがわかります。
- 安全と法令:事故防止の視点や運送ルールなど、プロに必要な知識を解説。
- 未経験からプロへ:研修を通じて自信を持って現場に立つまでの過程がわかります。

タクまる|現役昼日勤ドライバー(中の人のリアルを代弁中)
元・公務員→福祉業界を経て、地方で昼日勤として働くタクシードライバーに転職した「中の人」の体験談を、タクまるがわかりやすくお伝えします。
第1章:タクシー研修の目的とは?
タクシー研修の最大の目的は、新人ドライバーが「安全に」「正確に」「柔軟に」対応できるプロの力を養うことにあります。研修内容は会社ごとに若干異なりますが、座学、同乗指導、現場確認、端末操作など、いずれも即戦力として必要な実務スキルを網羅しています。この多岐にわたる学びが、お客様に安心と快適を提供するための土台となります。
第2章:実地(同乗)研修の内容と学び
先輩ドライバーとの同乗研修は、テキストだけでは決して得られない「生きた知識」を習得する貴重な機会です。
2.1 空港送迎ルートと判断力の重要性

筆者の営業する場所の空港へのアクセスルートには、高速道路の利用以外に大きく分けて二つの主要道路が考えられます。
どちらも時間帯によっては激しい渋滞が発生します。研修では、これらの主要道路それぞれの特性を深く学び、時間帯によってどちらのルートを選ぶべきか判断に迷う具体的な状況に直面しながら、最適な選択眼を養いました。
例えば、ある道路では「この区間は近道ではあるが途中一車線になってしまうので要注意。」別の道路では「信号が多いため大きな渋滞に巻き込まれる事がある。」といった各道の注意点も詳細に指導されます。先輩のプロの判断を肌で感じ、刻々と変わる交通状況で最適な判断を下す難しさと重要性を痛感しました。
2.2 空港での乗降ルールと注意点
空港では、乗客を降ろすためにタクシーが停車して良い区画が厳密に定められており、国内線と国際線では場所が異なります。もし間違った場所に停車すれば、すぐに空港関係者から注意を受けることもあります。研修では、実際に各降車エリアを巡り、「どこまでが停車可能で、どこからがNGか」を把握。お客様をスムーズに安全に降ろし、混乱を避けるための実践的な知識を習得します。
2.3 各待機場のルールと端末操作
タクシーには、お客様を待つための待機場がいくつか存在し、それぞれに独自の停車ルールがあります。研修では、主要な待機場の位置や、その場に応じた停車方法を学びました。また、タブレット端末を用いて、車両の状態を「空車」から「待機中」に正確に切り替える操作も実践で習得。これらの知識と操作が、効率的な配車と円滑な業務遂行の基本となります。
2.4 支払い・割引対応・メーター操作
日々の業務で最も頻繁に行うのが、運賃の収受です。現金のほか、多様な支払い方法に対応できるよう、機器やメーターの正確な操作方法を実地で確認します。
- 支払い方法への対応
通常運賃に加え、免許返納などによる各種割引など、アプリ決済、クレジットカード決済など、お客様の支払い方法に応じた操作を習得します。
- 正確なメーター操作
お客様にスムーズな精算体験を提供するため、確実で迅速な操作が求められます。
2.5 ジャパンタクシーでの車椅子対応
ユニバーサルデザインタクシーであるジャパンタクシーでの車椅子対応も、重要な研修項目の一つです。実際に車両を使い、実践的に介助スキルを学びます。
- リアスロープの展開方法
車椅子のお客様が安全に乗降できるよう、スロープの展開・収納方法を習得します。
- 車椅子の確実な固定手順
走行中の安全を確保するため、車椅子を車両にしっかりと固定する手順を学びます。
多様な乗客のニーズに対応できる力を育てる、非常に重要な研修です。



筆者は日替わり車両で毎日ジャパンタクシーに乗るわけではないので、この項目には興味がありませんでした。
2.6 車両の整備・清掃
安全な運行には、車両の適切な管理が不可欠です。研修では、プロのドライバーとして日々行うべき車両管理の基本を徹底的に学びます。
- 車内シーツの交換方法
週に一度の定期交換に加え、それ以外にもお客様が利用された後など適宜交換する方法を習得し、清潔な車内環境を保ちます。
- 出庫前の点検箇所と点検方法
エンジンオイルの量、タイヤの空気圧、ライトの点灯確認など、日々の点検項目と方法を徹底的に指導されます。
- 整備品の管理と対応
点検にて整備(エンジンオイルの交換等の必要の有無)が必要になった際は、整備品の保管場所や具体的な整備方法についても説明を受け、緊急時にも適切に対処できるよう備えます。
第3章:社内座学で印象に残った学びとは?
運転技術だけでなく、安全意識や法令順守の重要性を座学で深く学びます。
3.1 ドラレコ映像から事故を学ぶ
最も印象に残ったのは、実際に発生した事故のドライブレコーダー映像を視聴する座学でした。単に「なぜ事故が起きたか」を学ぶのではなく、「どうすれば未然に防げたか」という視点で、以下の重要性を再確認します。
- 速度超過の危険性
- 一時停止の徹底
- 左右確認の重要性
この経験を通じて、安全運転への意識が劇的に高まりました。「この映像を見て、自分の運転に対する認識が甘かったと痛感しました」—まさにその通りで、安全をリアルに理解する貴重な機会でした。
3.2 法令・接客マナー・倫理の基礎
タクシー業務に関わる主要な法令を基礎から体系的に学習します。
- 主要法令の学習
道路運送法、タクシー業務適正化特別措置法、道路交通法、道路運送車両法など、タクシー業務に不可欠な法律を学びます。
- 接客マナーと心構え
お客様に快適なサービスを提供するための接客マナーや、トラブルを未然に防ぐための心構えについても教わり、プロとしての倫理観を養います。
第4章:実務の基本を固める研修内容
日々の業務を円滑に進めるための、細かな実務についても丁寧に指導を受けます。
4.1 アルコールチェック機器の扱い方
出庫前と帰庫時に義務付けられているアルコールチェックは、安全運行の基本です。研修では、アルコールチェックする機器の正確な操作方法や、正常値が出るまでの注意点などを学びます。
4.2 日報・納金処理の流れ
一日の業務の締めくくりには納金作業があります。正確な事務処理能力も、プロには不可欠です。
- 日報への正確な記載
現金収入額、アプリ・電子マネー・クレジットカード決済額、免許返納割等による割引額、高速道路立替、消費税額などを日報に正確に記載する方法を学びます。
- 機械での集計と提出方法
現金収入については計算機に入れて集計し、集計結果などを印字した用紙が出力されます。その用紙と日報・クレジットカード決済の領収書・給油した燃料の量がわかるレシートを添付して事務方に提出して納金作業が完了します。
4.3 忘れ物チェックと車内清掃
お客様の大切な忘れ物を防ぎ、常に快適な空間を提供するため、以下の習慣を身につけます。
- 忘れ物チェックの徹底
帰庫時には必ず車内の忘れ物チェックを徹底します。
- 車内清掃の習慣化
出庫時・帰庫時の車両清掃を欠かさず行い、清潔感を保ちます。
第5章:タクシー協会による新人講習とは?
タクシー協会が主催する新任乗務員講習は、業界全体で共有されるべき知識とプロとしての心構えを再確認する場です。ここでは、タクシー営業の根幹をなす運送可否のルールをはじめ、プロとしての自覚を高める重要な内容を学びます。
5.1 法令知識の基礎固め
社内研修ではカバーしきれない、より網羅的な交通関連法規を外部講師から学びます。特に重要なのは、道路運送法・タクシー業務適正化特別措置法・道路交通法・道路運送車両法といった、タクシー業務に不可欠な法令です。
また、この講習で特に印象に残るのが、タクシー営業における運送可否のルールの明確な説明です。これは、タクシー会社が許可を得て運行できる範囲である「営業区域」に関わる重要なルールです。
- 運送ができるケース:
- 出発地と到着地の両方が営業区域内: たとえば、A地点からB地点へ(いずれも営業区域内)の運送は可能です。
- 出発地が営業区域内で、到着地が営業区域外: 営業区域内から営業区域外への運送もできます。
- 到着地が営業区域内であれば、営業区域外からの出発: 営業区域外からの出発でも、到着地が営業区域内であれば運送は可能です。
- ポイント: 「出発地または到着地のどちらかが営業区域内」であれば運送が可能です。
- 運送できないケース:
- 出発地・到着地の両方が営業区域外: たとえば、C地点からD地点へ(どちらも営業区域外)のような、営業区域外どうしの運送は法的に認められていません。
これらのルールを理解し遵守することは、法令順守のプロとしての責任感を高める上で不可欠です。
5.2 ドライバーとしての心構え
外部講師による「ドライバーとしての自覚」の講義では、安全運転だけでなく、お客様へのホスピタリティや、万が一のトラブルへの対応、そして観光案内や介護支援など、多様化するタクシー業務に対応するための心構えを学びます。これは、お客様に信頼され、選ばれるドライバーになるための重要な要素です。
まとめ:研修で得られるのは“知識”だけじゃない
二種免許取得後の研修では、実地・座学・制度理解の全てが、現場力に直結する学びとなります。単なる運転技術や知識だけでなく、日々の業務で必要となる「判断力」と、安全やサービスを徹底するための「習慣化」がいかに大切かを痛感します。
この充実した研修を経験することで、未経験からでもプロとしての準備を整え、自信を持って現場に出られる安心感が得られます。不安なまま乗務を始めるのではなく、しっかりと準備を重ねてお客様から信頼されるプロのドライバーを目指せる。それが、この研修の最大の価値だと感じています。
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